ウンベルト・エーコの「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」の表紙

紙の書物

 イタリアの哲学者、論理学者のウンベルト・エーコがジャン=クロード・カリエールとともに「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」で、紙の書物はなくならない理由を滔々と述べているのだが、エーコたちに限らず、かなり多くの人々が、同様な意見を述べている。
紙の書物というのは、独特な文化の産物で、その素材感、美的な価値、コレクションの喜びなどさまざまな付加的な要素を伴っていて、書物の内容とあいまってかけがえのない価値を生み出すものだ。
オンラインでの映像を使った対話のやり取りが一般化して、話者の背景が気になるようになった。背景として選ばれるものの一つに書棚があって、書籍の背を見せながら話す人は多い。見る方も、話の内容よりも、むしろ背景に並んでいる書物の背表紙に視線がいきがちになる。そこに並んでいる書物の内容が、話者の思考、思想を端的に示すからだ。
「グーテンベルグの銀河系」でマーシャル・マクルーハンは、印刷技術が生み出したこの書物の宇宙の偉大さを取り上げた。
電子書籍はデータ管理あるいは情報収集としては便利なものだが、紙の書物には敵わないものが多々ある。もちろんネットワークという巨大な情報装置があり、それにまた人工知能が加わって、電子的なデータの世界も新たな段階に入っている。
それでも紙の書物の魅力は、止むことはないだろう。
おそらく知的な探究の精神は、両方の道具を使いこなしていくと思われる。

このオンライン書店もこのことを肝に銘じている。

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